長襦袢の歴史と現代日本への変遷を紐解く前に 〜はじめに〜

長襦袢は、現代の和装実務ではしばしば「着物の下に着るもの」と簡潔に説明されがちです。

その位置づけを単なる補助的下着として理解するだけでは、日本の着物文化の奥深さは捉えきれません。

長襦袢は、肌に近い「清潔さ」と「着心地」の機能性側面と、外側の礼法的な側面を分ける存在でありながらも、身体の線を整え、衿元の見え方として美しさを表現し、季節や場面に応じた素材選択までも可能にし、さらに時代によっては表着以上に凝った意匠を潜ませる場でもあったわけです。すなわち長襦袢は「見えない衣服」でありながら、着物文化を内側から支える「日本の美意識そのもの」だとも言えます。

深く知れば知るほど、長襦袢の魅力に気づくことでしょう。

本連載においては、長襦袢を「下着の一種」という定義から切り離して、①語源と導入、②江戸期の意匠化、③近代の標準化と商品化、④戦後以降の縮小と再編、⑤現代日本における継承・教育・サステナビリティ、という5つの観点から紐解いていきます。

参考資料としては、各種の辞典、文化財データベース、服飾史・被服教育に関する学術論文、経済産業省資料を中心に用い、そのエビデンスを担保した上で論じたいと思います。

連載 日々、絹子さん。